あんなにも激しく感情を爆発させてしまった―――。そう考えながら、公園で腫れた目を冷やす。
・・・でも、不思議と後悔はしてなかった。
言葉に出すことで、自分自身ですら気付かなかった、無理やり押し殺していた気持ちを吐きだすことができなんだかスッキリした。
「はぁーあ。」
空を見上げる。
「自分にも嘘をついてたんだな・・・・・・」
自分の本当の気持ちを、本当にしたいことを押し殺しすぎて、心が悲鳴をあげていたのかもしれない。
決して良い状況じゃないのに、こんなに満足した気持ちなのがその証拠だ。
でも、思ってた以上に、仙道さんのことが好きだった自分にびっくりする。
・・・・・・・・嫉妬が、大きすぎたんだな。
確かにあの人は、浮気ばかりしていた。でも、いいところもたくさんあった。
あの優しさを、少し自己中なところも含めて好きだった。
―――趣味悪い。
苦笑する。
――でも、こうなってしまった以上、もう仙道さんと戻ることはないだろう。
あんなことをしてしまったわけだし。
・・・きっと、もともと仙道さんは私のことを好きじゃないし。
そう考えるとまた泣けてきて、区切りをつけるためブランコから飛び降りる。
キィ・・・キィ・・・と惰性で揺れるブランコ。
帰ろうかな。
そう思い、暗くなりかけの公園を後にしようとした時だった。
ガシッ!!
突然肩を掴まれる。
「ひっ!?」
心臓がとまるほどにびっくりして、後ろを振り返る。
そこには、肩で息をしている、汗だくの仙道さんがいた。
藤井さんがあんな風に思ってくれていたなんて。
状況があんなのだったのに、俺は感動してしまっていたんだ。
藤井さんが、俺に対してあんな風に激しい感情を持っていたなんて夢にも思わなかった。
物足りなさは、あの子の我慢で―――。
――――そして俺は、きっと嫉妬されたかったのだ。
走って、走って、探し回る。
彼女の居そうなところ、全部探した。
こういう時、思い出の場所があったらそこにいるんだろうけど―――
俺達には、俺のせいでなかった。
だから、必死に走り回って、小さな公園でブランコを漕ぐ彼女を見つけたときには感動したね。
「何で逃げたの」
藤井さんは無言だ。
それどころか、また手を振り払って逃げようとする。
それをさせまいと、藤井さんの手をしっかりと掴んだ。
「・・・何の用ですか」
そう言ってやっと口を開いたが、ふいと顔を背けた彼女になんだか胸が締め付けられる。
先ほどの激昂を思い出す。
俺は、どれほどに彼女を傷つけたのだろう・・・。
目の前の、小さな彼女を見つめる。
「本当に、ごめん・・・・・・・」
藤井さんは、何も言わない。
「俺、藤井さんのこと、・・・信じてもらえないかもしれないけど、本当に好きなんだ。」
俺の我儘のせいで、そんなに傷ついてるとは思ってなかったんだよ。・・・本当に。
優しい藤井さんに安心して、油断して、甘えてた。
藤井さんの肩が震えだす。
「嘘・・・!」
「・・・本当だよ。藤井さんがそんな風に嫉妬していたなんて、微塵にも思わなかった。それに、藤井さんが俺を好きだから許してくれてるって変な自信があったんだ・・・。
時々、罪悪感はあった。でもそれでもまだまだ遊びたくて、他の女の子を優先させたりして・・・俺は本当に馬鹿で、ガキだったんだ。」
ごめんと謝る。
そもそも初めに会った時泣いていたのだから、もっと優しく接するべきだったのだ・・・
自分の浅はかさと、犯してしまった間違いの数々に身震いがした。
「何を言っても嘘に聞こえるかもしれないし、許してくれとも言わない。でも、我儘だけど・・・・このまま終わりなんて絶対に嫌だ。」
未だ睨みつける彼女に、はっきりと告げる。
「これからは大事にする。絶対に。」
そう言って、藤井さんの手を両手で包みこむ。
「・・だから、もう一回だけ、信じてくれないかな。」
そう言って笑った俺に、
「もう一回だけですからね・・・?」
怒り顔の藤井さん。
俺は無言でしっかりと首を縦に振った。
怒り顔のまま、藤井さんの目から、また大粒の涙が溢れだした。
何故か、俺も泣いてしまった。
続く(後日談へ)