優しい優しいあなた。
こんな私にも優しいあなた。
そして・・・
誰にでも優しい。
【博愛主義者1】
夕暮れが影を伸ばし、私の影は校舎の影にくっついて溶け込んでいた。
東の空を見上げるともうとても暗く、でも少し綺麗だった。
放課後、この時間はいつもならば、バスケットを見に体育館へ行っている。
・・・だけど、今日はとても行けそうにない・・・
昨日から、晴子と桜木君が付き合い始めたのだ。
そのことを知らされた時には、おめでとうと笑顔を作ったが、頭はまったく動いていなかった。
笑顔も上手に作れていたか自信がない。
・・・よく思い返すと、口の端が若干引きつっていたかもしれなかった。
桜木君のことはずっと好きだった。一生懸命ボールに手を伸ばす姿が、誰よりも我武者羅なところが、決して諦めない強さが。
・・・勿論、付き合えるなんて大それたこと、思ってはいなかったけど。
・・・・・・でも、それでも、思ったよりダメージは大きかった。
その事実を知らされた後、そのまま家に帰り、ベッドに突っ伏してひたすら泣いた。
悲しくて、悲しくて。
いつかはこうなると分かっていたが、涙は止まらなくて、結局目がパンパンになるまで泣いてしまった。
でも、誰にも知られずに終わっていく恋なんて、私にお似合いだと思った。
そして今、帰ることも寂しさを際立たせてしまいそうで嫌だったので、校門のところでボーっと帰宅や買い物に行き交う人々を見つめていた。
今までの報われることのない不毛な恋を思い出して、でもそれでも楽しかったことを思い出して、また涙が目に溜まってしまった。
「・・・・・どうしたの?」
急に声をかけられた。
逆光で一瞬分からなかったが、とても大きくて、個性的なヘアスタイル・・・知っている人だった。でも、その人がここにいるなんて・・・
「仙道さん・・・?」
顔が段々と明らかになってくる。
それは、綾南バスケ部のエース、仙道彰、その人だった。